大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)937号 判決

理由

(控訴人の本訴請求に対する判断)

一、控訴人と被控訴人との間に、控訴人が発注し、かつ、原料たる材木を被控訴人に供給したときは、被控訴人において、責任をもつて訴外不二木工株式会社をして紡績用チーズ木管を加工製造させた上、控訴人に納付する旨の木管加工契約が成立したこと、被控訴人が右契約成立後控訴人に対し、右約定による木管を納付していないことは、いずれも当事者間に争いがなく、証拠を考え合わせると、右契約が昭和三二年七月一四日頃、倉吉市内の料理店において、控訴人代表者中坊常吉、被控訴人及び訴外会社代表者水谷八郎が会食した席上、口頭をもつて締結され、その数日後(甲第一号証の作成日付より後)甲第一号証の契約書に調印されたことが認められる。

二、而して、証拠を考え合せると、控訴人が本件契約による原料材木を、同三二年七月二六日頃から証外会社に供給し、かつ、本件加工賃前渡代金として控訴人主張の通り本件手形を含む約束手形四通(手形金額各金一五〇、〇〇〇円)及び現金二〇〇、〇〇〇円を訴外会社に交付し、訴外会社は控訴人に対し、右材料の一部に加工して木管を製造して納入(但し不良品)した結果、同年一二月末日現在において一五〇余万円の木管未納分が存在したが、訴外会社が経営不能となつたため、控訴人の催告にもかかわらず残余の木管の加工製造ができなくなつたことが認められ、右認定を覆えす足るに的確な証拠がない。

三、〔省略〕

四、そこで、控訴人の本件契約解除の適否について考えてみる。

控訴人が訴外会社に対し、屡々残余の木管加工製造義務の履行を催告していたことは前示の通りであるところ、右不履行を理由として、被控訴人に対し、本件契約を解除する旨記載した準備書面(同三三年三月一三日附)を原審に提出し、右書面が同三三年四月一六日被控訴代理人に送達されたことは本件記録によつて明かなところであるから、これにより本件契約は解除されたものといわねばならない。

五、してみると、本件手形交付による前渡金に充てらるべき木管を納付したことについて主張立証のない本件においては、その点について判断するまでもなく、被控訴人に対して振出された本件手形の原因関係は、本件契約解除により消滅したというべく、これに伴い被控訴人の本件手形上の権利も消滅し、被控訴人は控訴人に対し、本件手形を返還する義務があるといわねばならない。

(被控訴人の反訴請求に対する判断)

本訴請求について判断したところにより明かな通り、被控訴人の本件手形上の権利は既に消滅したのであるから、右権利の存在することを前提とする被控訴人の反訴請求は、その余の点について判断するまでもなく(被控訴人が訴外会社から善意で本件手形を取得したとしても、それは両名間の内部関係に過ぎないことについては、本件に対する判断中第三項末段参照)理由がない。

よつて、以上の判断と異る原判決は失当であるからこれを取消し、被控訴人に対し、被控訴人が本件手形上の権利を有しないことの確認を求めるとともに、本件手形の返還を求める控訴人本訴請求を正当として認容し、控訴人に対し、本件手形金及びこれに対する利息金の支払を求める被控訴人の反訴請求を棄却。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例